【Dr.のホンネ】結局どの治療が一番いいのですか?という質問への答えについて
- 更新日時 2019/04/14 23:21
治療を受ける方から、よく聞かれる質問についてお答えします。より具体的な、ためになる内容のものは「コラム」のコーナーをご覧ください。ドクターブログでは、医学的な観点からはかなり外れたごくごく個人的なしょうもないやりとりを紹介するものですのでご了解ください。
「結局どの治療が一番いいのですか?」
カウンセリングで様々な治療法を比較検討しているときに、「結局どの治療が一番いいのですか?」という質問は大変多いです。正直この質問はちょっとニガテです。カウンセリングの目的は情報を的確に提供することで自分で適切な選択ができることですので、この質問が出るということは、カウンセリングの目標点からまだまだ遠いところにいるということになるからです。
そしてさらに付け加えると、質問に出てくる「一番いい」の意味には、ふたつのニュアンスがあります。
- 治療効果が一番高い
- その方に一番適している
これらのどちらのニュアンスで言っているのか、判断がつく場合とつかない場合があるからです。
たいへん大雑把に言いますと、情報のリテラシーが低い方は1と2の意味を区別できていない場合が多く、インテリジェンスの高い方は2の意味で聞いていらっしゃることが多いです。私はカウンセリングでは本質的に2の意味でしか話はしないのですが、カウンセリングの話の中から、その方の知的なキャパシティーをある程度把握して、話す内容の密度を調整して決めています。
分かりやすく例えると、電気屋で「結局どのパソコンが一番いいのですか?」と聞くことを想像してください。電気屋は、
- パソコンで何をするのか(webをみるだけか、動画編集か、ゲームをするのか、イラストを描くのか)
- 持ち運ぶのか置いて使うのか
- 今まで使っていたものとの互換性はどうするのか
- デザインはかっこいいものがいいのか、こだわらないのか
- 好きなメーカーはあるか
- 拡張性が高いほうがいいか(将来も長く使うか)
- 予算はどのくらいか
などいろいろ聞いてくるでしょう。そしてそれらに対する個人的な回答をまとめ合わせて、「用途・嗜好に一番合ったもの」という意味で最高の1台を選ぶはずです。つまり普通のカウンセリングでは1の要素は出てくることがありません。
髙澤が回答するときのパターンの例
「一番いいのはやっぱり〇〇です。」
こういう風に即答する場合は、
- 〇〇以外ではそもそもよい結果を出すことが難しい
- 〇〇以外ではその人が想像しているような結果は得られない
という判断をしていたりする場合です。ダウンタイムがどうとか、細かいリスクがどうとか、効果が出るまでの時間がどうとか、費用がどうとか、もう全然そういう比較をしている場合じゃなくて、〇〇以外の他の選択肢に全く魅力がないときにこういう言い方をしている場合が多いです。こういう返事を聞いた場合にはもう腹をくくって〇〇という選択肢について深堀りしていくのが賢明です。
「私なら〇〇を選択します。」
こういう返事があった場合は、いくつかの同等の魅力的な選択肢の中から、その方のバックグラウンドや好みや治療に際して優先する事項にマッチした選択を提案していると思ってもらって結構です。好みや興味で他の選択肢を検討しても特に問題はないと思いですが、〇〇が最適な選択ですよというメッセージです。
「多くの人は〇〇を選択します。」
私が話す治療に関する情報提供に対してリアクションが乏しく、治療選択に関わる情報収集(好みやコストの感覚、リスクに対する知識・関心など)が上手く進まない場合には、本来の意味で適切な選択ができません。ですのであまりにも関心が薄い方の場合には無難な選択肢に誘導する意図でこのような言葉を言うことが多いです。ですので治療効果が高い選択を提案しているとは限らない答えのひとつです。
「まあ無難なのは〇〇ですね。」
私がこういう返事をする場合は、その方が「〇〇が一番の選択肢のはず!!」という妄想にとらわれ感情的になっている場合が多いです。理論建てたカウンセリングではそういった誤解が解けないと半ばあきらめたときにこのような回答をしている気がします。心の中では「もっと本当はいい選択肢があるのに」ということを思っていて、それを口に出すことができないほどの雰囲気の方にはこういう言い方になってしまいます。
「まず〇〇をやって、効果をみてから△△や◇◇の選択肢を考えてもいいと思います。」
知的な余裕のある方にはこのような提案をします。頭の回転が速くて順序だてて理解を進められる方は、「効果が高い治療はリスクも高い」ということを直感的に知っています。ですので「まず〇〇をみてから」という私の言葉が「〇〇は効果はマイルドで低リスク」という意味だと理解します。そこで、△△や◇◇の選択肢についての情報を整理・理解して自ら選択しようという姿勢が出てくるので、その理解への取り組みを促すようにしています。
まとめ
いかがでしょうか。知っていただきたいのは、プライム銀座クリニックではカウンセリングでは押し売りの場ではありません。適切な選択が自らできるようにするための場ですので、あらかじめ以下のことは知っておいてください。
- 「どの治療が一番いい(適切)か」は、様々な個人的ファクターによって変わる(必ずしも友達やネットの口コミは自分には当てはまらない)
- カウンセリングはひとつひとつの選択肢がその方に最適なものかを検討する場であって、「一番効果が高い」治療をゴリ押しする場ではない
- 一般的には効果が高いものほど変化の振れ幅が大きいので、結果が理想にピッタリ重ならないというリスクが高い
- 最終的には自身で選択する
ということです。参考になれば幸いです。